高校へ進学して環境が変わると吃音に対する意識も弱くなり、詰まることも少なくなって同級生たちと楽しく会話ができていました。
吃音に対する意識というのがとても大切なところで、詰まったらどうしようと不安を持つことで症状が悪化し、本当に言葉が出せなくなってしまうんです。
高校時代のアルバイトは飲食店で接客業をやっていましたが再び苦悩の連続でした。
いらっしゃいませ!!が言えないのです。
飲食店に行ったら「いらっしゃいませ、何名様ですか??」
必ず聞かれてから席にご案内されますよね。
こんな時に、言い換え、のテクニックが役に立ちます。
いらっしゃいませが言えないことが多かったこの時期は「こんにちは!何名様ですか??」と上手く言葉を言い換え対応していました。
楽に話せる時期や息が詰まりやすい時期など、波があります。なぜそうなるのか心あたりはありません。
自分なりに工夫をすればなんとか会話はできるのですが、こういった対策を周りの方々が無意識に奪ってくるのです。
「こんにちはじゃないだろ、みんないらっしゃいませって言っているのだから合わせなさい」
上司が細かい方で、私1人だけが「こんにちは」と言っていることが気になるようで「いらっしゃいませ」と言いなさいと指摘をされました。
それが言えないから困ってるんですよ……
こうなってしまうと「いらっしゃいませ」と言わなければいけない状況が近づくことが恐怖でしたね。
大きな窓ガラスの向こうに見える駐車場に車が入ってくるのが見えてお客様が来店しました。
「いらっしゃいませ」って言わなきゃ、言えるかな、言えなかったらどうしよう。
分かってはいるんですよ。吃音に対する意識を強めたら、不安になっちゃダメだって。
不安になるから本当に息が詰まって言葉が出せなくなることを。
何年付き合っててもやはり吃音に対する不安がなくなることは難しいです。
再び「いらっしゃいませ」が言えなくなった私は、上司が見ている前で堂々と「こんにちは」と言いました。
「私の話し聞いてた??」「あなた1人だけ勝手なことが許されると思ってんの??」「ここはやる気のないような人の居場所じゃないし、私の言うこと聞けないなら帰れよ」
「すいません、言葉が上手く出せなくて…」
「出せないってどういうこと?」
「昔から、たまに言葉が出せなくなることがあるんです」
「そんな都合よく言葉が出せなくなるわけないだろ」「いいから言われた通りやりゃいんだよ」
理解を求めようとすればするほど上司の怒りが強くなっていくのを感じました。
それから駐車場の見える大きな窓ガラスからお客様の来店が確認されたら私はお店の入り口から離れ、店の奥へと逃げ、来店したお客様と目を合わせないようにしました。
こうすることで別のホールスタッフが案内をするように促し、私は案内をしないように上手くその場を切り抜けました。
別のホールスタッフも、「あ、あの人もうこれ以上怒られたくないんだろうな」
察してくれていたのかもしれませんね。
変に気を使わせてしまって申し訳ない。
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