営業のお仕事を始めて早一か月。
今日、初めて電話に出ました。
「株式会社〇〇の〇〇と申します」
ピーっピーっ。どうやらFAXだったようです。
受話器を置くと上司から、「いきなり名前から名乗ると、こっちから電話かけてるみたいじゃん」
「お電話ありがとうございます、株式会社〇〇の〇〇と申します」
「そっちのほうが丁寧だし良いと思うよ」
細かいところを指摘してくれる上司って本当に優しい人だと思う。
それに応えられないことがどれだけ辛いことか。
そのあと、上司と取引先に挨拶周りで車で外出をしました。
「そろそろ入社して一か月経つね。どう、やっていけそうかな??」
「分からないこととか、悩みとかあれば聞くよ」
言うべきか、言わないべきか。
過去に告白をして、理解されたことはない。
やる気の問題。落ち着いて喋ればいい。気のせいじゃない?
上手くいったことがない。
しかしつい先ほど「お電話ありがとうございますと言いなさい」
指摘されると悪化してまた同じことを繰り返し怒られる。
指摘されたからと言って必ずしも悪化するとは限らないんですよね。
むしろ良くなる時もある。
どういう時に良くなって、どういう時に悪くなるのか分からない。
せめてこうすれば喋れるとか、もう少しヒントがあればいいのですが、パターンがなくて付き合うのがとても難しい。
「あの、これ言っていいのか分からないのですが」
「昔から、なんでか分からないのですが、言葉が出せなくなることがあるんですよ」
「息を吐かずに、音を出そうとしてください」「そんな感覚に陥るんですよ」
「それ、なんか、あれかな、発達障害的な??」
「adなんとか??あ、いや、きつ、なんとかだっけ??」
「吃音です」「小3か小4くらいからです」
「中学時代同級生の名前が呼べずにお前やあなたって呼んで、名前で呼んでよって言われたり」
「ありがとう、ごめんね。おはようも言えない」
名前聞かれて、「私の名前は、あの、えっと、その…」
「お前自分の名前知らんの?w」
中学時代苦労した話をしました。
高校になって助けを求めて、パソコンで検索をしたら、治療法は確立されていないと。
上司は、ドラマかなんかで吃音っていう名前は聞いたことがあるけど、どういうものかはよく知らなかったらしい。
「前の職場は、吃音に悩ませられることの少ない居心地のよい会社でした」
「人と接するのは好きですが、吃音に苦しめられるのは嫌なんです」
「でも営業やってみたいですが吃音を理由にチャレンジしないのも勿体ない」
「10年ほど前に、北海道で死んじゃった人もいるし」
「どれだけ考えても答えなんて出ないんです」
「悩んだ結果転職をして営業の道に進みたいという思いで、こちらの会社に来ました」
「まだ入社したばっかりで、仕事に慣れていないこともあって吃音出やすいんです」
「ある程度、仕事を覚えて、慣れてこれば上手く喋れるようになると思います」
「どれくらいで慣れるものなの??」
「分かりません、ただ、100%完全に喋れるようにするのは難しいです」
「慣れたとはいえ、吃音の出る頻度が少なるだけ」
「お客様に、名刺を渡すときに、自分の名前が言えないかもしれない」
「お客様の名前が言えないかもしれない」
「住所が言えないかもしれない」
「クレームが起きても、謝ることができないかもしれない」
「慣れたとしても、99%しか治りません」「1%は障害が残るんです」
「どこかのタイミングで言葉が出せなくなって、トラブルに発展する可能性はあると思います」
「20年以上吃音と付き合っていれば、言い換えや、詰まっている言葉を相手に言わせるなど」
「私なりに上手く言葉を発するためのテクニックは持っています」
「わがままかもしれませんが、ある程度は自由に喋らせてほしい」
「言葉の言い換えというテクニックを奪われるのが一番苦しいです」
「お電話ありがとうございます」と言いなさいと指摘しないでほしい。
「もしもし」でもいいじゃんね。
「お世話になっております」と言えないのなら「こんにちは、と言い換えさせてほしい」
お客様の名前が呼べないのなら、「お客様は」「お二人は」など。
「指摘をされることで、言い換えが出来なくなり、吃音に対する不安や意識が強まり悪化するんです」
ほんとわがままだと思う。自分だけ自由に喋らせてほしいなんて。
上司は、「不動産のお仕事って、数千万のお金が動くわけで、トラブルが起きて、最悪訴えられたら終わりだと思ったほうがいい」
「言葉の言い換えをしてお客様が間違った解釈をしたり、そんなの聞いてないんだけど」
「疑問が残らないように、丁寧に説明してもらわないと、取り返しがつかないことになる」
「名前とか、住所とか、会社名とか言い換えの聞かない言葉はいっぱいあるし、指摘されることもこの先いっぱいあるよ」
「その度に症状が悪化して説明ができないなんてなったらとても一人立ちなんてさせられない」
「せっかく営業がやりたいっていう思いで、しかも宅建まで取ってきてくれている人にやめろなんて言えないし」
「でも言葉が出せなくなって大きなトラブルに発展する可能性があって会社がリスクを背負うのもおかしい」
「何かあったら、責任取るのは会社だから」
上司も返答に困っている様子でした。
こうなることは分かっていました。
やはり吃音であるということは隠すべきなのだろうか。
告白したところで、会社もどうしろとって話しじゃんね。
私自身どうすればいいのか分からないものを会社が分かるわけないよね。
私はこの先どうなるんだろうか。
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